
■会社説明
株式会社esa(読み:イーサ。意味: Environmental Solutinons Architectの頭文字)は、2022年3月に設立。独自技術により、これまでリサイクルが難しかった複合プラスチック素材をペレット化する仕組み【esamethod】を確立。これにより、今まで扱えなかった素材をリサイクルできるようになるだけでなく、途中工程で排出されるCO2を圧倒的に少なくし、コストも抑えることができるようになりました。再生プラスチックペレット「Repla®」は、複合プラスチックを低コストかつ低エネルギーで再資源化する独自技術を用いて作られており、企業からの廃棄プラスチックを有効活用し、環境負荷の削減に貢献しています。
( 株式会社esa: https://esa-gl.com/ )
2024年11月20日のインタビュー記事です
1.自己紹介
黒川:黒川周子です。生まれは日本ですが、中学3年からイギリスに渡って大学を卒業した後、アメリカで就職したので、海外で12年くらい過ごしました。イギリスの大学では社会人類学を勉強して、その前は環境社会学を学んでいました。このことは今の仕事に通じるものがあります。帰国後は、飲食店を経営したり、飲食店を作る仕事をしました。
その後、2022 年3月に私を含めた共同メンバー4 名でこの会社esaを創業しました。累計9.3億円を調達し、シリーズBではVCや地銀、事業会社にも入っていただきました。
2.社会課題を強く意識してのesa創業
幸田:今回、社会課題を強く意識された起業と理解しています。どういう社会課題をなぜ意識されたのかということについて、海外でのご経験と本起業とのリンケージについてお話いただけますか。
黒川:元々会社は単独では企業活動をなし得なるものではなく、お客さんや地域、土地の環境などのエコシステムの中で企業活動をすることなので、社会課題にも向き合っていく必要があると考えていました。今回esaを立ち上げるにあたって、共同創業者が世界的な問題であるプラスチックの廃棄とCO2 削減に寄与できる技術を開発したということで、私もぜひ一端を担いたいと思い、共同での創業に至りました。
社会的インパクトをもたらすスタートアップも決して自分だけが良ければいい、と考えてはいけないと思っており、そのビジネス自体が社会課題を解決できるものであればやりがいもありますし、少しでも何か還元できるのではと考えたこともきっかけです。
海外での経験は、チャリティーへの取り組みを身近に感じられました。学校では自分のお弁当を月に1回少し質素なものにして、その分のお金を寄付しましょうということがありました。
また、2011年の大震災以来、自身でチャリティーも行っているのですが、海外のチャリティー事情を直接聞く機会があり、海外ではチャリティーや社会に意義を考える場面がもう少し身近にあるのかなと思います。
幸田:今までご経験されてきたキャリアと今回の起業もかなり結びつけられているということですね。ご一緒にやる人たちと理念であるとか、あるいは社会課題に対する問題意識の強さみたいなことは、基本的には共有が非常にできて、今回起業して進まれているという位置づけでいらっしゃいますよね。
黒川:そうですね。そこがこの会社にとっては一番大切なビジョンでありミッションの部分です。例えば、私たちがすごくいいと思っていることがあまり響かないで、ビジネス化することが困難になりそうな時にでも、その社会課題を解決したいと私たちは思っていたよというビジョンの共有ができるかどうかは非常に大切だと思っています。
3.起業の楽しさと苦しさ
幸田:起業3社目ということですが、起業とかスタートアップの楽しさと、同時にその苦しさはどんな感じで捉えていますか。
黒川:性格的に非常に楽観的だという意味においては、未だ成功していないので向いているとは言えませんけれども、毎日いろんなことがありますが、前進あるのみと捉えるようにしています。社会的な信用もまだない中で、自分たちの技術を頼りにビジネスを進めなければならず、その辺りの困難さは毎日感じます。
最近社内ではいろんな人がいろんなところから集まるようになり、また、会社運営面の問題から決定したことが予定通り進められないことが多くなりました。創業者についてきてくださる社員さんは色々と迷い苦労をかけているのではないかと思っています。
楽しさの方は今日もスタートアップのイベントがあり海外投資家さんに集まってもらいましたが、そういうところで「新しい技術ですごく面白そうだね」って声をかけていただいたり、新しい方にお目にかかって壁打ちできる環境にいて、自分たちが毎日ブラッシュアップされる気がします。そういう楽しさはすごくあります。
幸田:esaに期待する投資家や事業戦略パートナーに対して、社会的な意義や位置付けを訴えるとともに、一方で相手先からすれば、本当にポテンシャルがあるのか、あるいはフィジビリティがあるのか、というようなところはかなり見ていると思います。実際に取り組まれていて、何を感じられていますか。
黒川:シード期からみやこキャピタルさんが3億円のお金を入れてくださったことは、自分たちの技術で市場を開拓しなければならないと新たな決意になりました。一方で今回、大日本印刷さんやCBCさんという事業会社とは2 年間の実証実験を経たタイミングで資本業務提携の締結に至りました。実証実験では、我々のテクノロジーを一番間近で見てきた方たちにご評価いただけたということで、また違うフェーズに乗るべきタイミングが来ていると感じます。
4.今後の展開とチャレンジについて
幸田:esaを立ち上げられて 2 年半がたち、資金調達もされて、新たなフェーズに入っていると思います。今後それを実現していくためのチャレンジとして何がポイントで、あるいは特に考えて取り組まなければいけないことについては、どう意識されていますか。
黒川:喫緊の課題として捉えているのは人的リソースです。これまでは創業メンバー中心でやってこれてましたが、今後は海外にも出ていきたいので、会社をしっかりと作り上げていくために、業界知識や国際経験などを兼ね備えた新しいメンバーに入ってもらう時が来たと思っています。
幸田:そうしたプロフェッショナル人材に領域ごとに参画してもらうためのチャレンジはどう捉えていますか。
黒川:タスクをクリアにすることですね。新しいメンバーがesaに慣れて十分能力を発揮できるには時間がかかります。タスクをクリアにすることで、しっかりとした戦略を練れるようにします。今まではみんながいろんなことを全方位的にやってきた面がありました。
また、創業メンバーであり取締役の立場でもある我々が後から入ってきた人たちの意見を聞きにくい状態になっていると思うのです。9.3億円を2 年間で調達できました、とか、いろんな方たちとお話できます、という自分たちの今の姿を取り払って、新しい方が全力を発揮してもられる働きやすい職場づくりを特に我々取締役メンバーは意識的に作っていかないといけません。
幸田:日本の社会は、グローバル化やカーボンニュートラルに向けた対応などかなり課題を抱えていて今後もいろんな難しさがあると思います。今後、日本社会にどういうことを期待していくのかお話しいただけますか?
黒川:最近すごく思うのが、多様性です。これはジェンダーだけの話ではなくて、国籍とか考え方を含めて今言われているのには理由があって、さまざまな経験やバックグラウンドを有する人の考えやアイディアといった英知を集結した方がより良いものが生まれると、すごく感じています。
自分がオールマイティーではないからかもしれませんが、みんなの力があった方が会社は前に進むと信じているので、みんなの英知を最大限使うための多様性を、esaに取り入れられたらいいと思っています。
幸田:黒川さんが見本にされている起業家や経営者、あるいは背中を追いかけているような方がいらっしゃいますか。
黒川:緒方貞子さん、グラミンバンクのムハンマド・ユヌス氏、経営者である父、学者である母と、挙げればキリがないですね(笑)
時代を切り開き、自らの信念を持ち行動する事で、周りを幸せにしていった方々、そういった諸先輩方の背中を追いかけ続けていきたいです。
幸田:これからの抱負を一言お願いします。
黒川:シリーズ B の過程の中で自分たちに足りないものをすごく感じた数ヶ月でした。今は調達ができてお取引先様も増え、海外ピッチに声をかけてもらえたり、何かちょっと鼻高くなってない?っていうことを自分たちでしっかり意識して、創業した時の自分たちのビジョンやミッションで思っていたことを、ここで改めて考える必要があるかと思います。会社として創業メンバーだけでなく、社員さんも一緒に振り返って未来に向かってどういう風に進んでいくのかを考えるタイミングに来ているなと。それをしっかりあと1 年の中で実行しながら、また第三のステージに向かっていけたらいいと思っています。
幸田:頑張ってください。ありがとうございます。
黒川:本当に頑張ります。ありがとうございました。