世界のアントレプレナーたちと日本の起業家~リスボンで感じたこと~(あずさ監査法人 常務執行理事 阿部 博氏)

2024年11月14日にポルトガルのリスボンで、KPMG Private Enterprise主催のGlobal Tech Innovator 2024(以下GTI)が開催されました。世界23か国1,500以上の企業の中から選ばれた高いイノベーションの可能性を秘めるスタートアップが参戦しました。

丁度時期を合わせて欧州最大級のスタートアップイベントWeb Summitが開催されるリスボン。その市域人口は約54万人(2021)にWeb Summitには約7万人が集まる一大イベントです。GTI会場にもたくさんの方が集まりアントレプレナーたちが熱いピッチを繰り広げます。

羽田空港からロンドン・ヒースロー空港、そしてリスボンへ向かいましたが、当然ですが周りには外国人で溢れています。異国中での自分という存在を思うとき、力強く自分の存在を感じるのと、周りに流されてしまう自分を感じるのとでは、前者でないと世界で残れないと思う時がありました。やはり世界の舞台で勝ち残るには、力に満ち溢れたスタートアップしか勝てないのだろうと思います。実際にGTIでのピッチは、一人一人が全身全霊を込めて、英語という共通の言語で自分の技術・製品を世界に向かって発信していました。

日本でのいろいろなピッチをたくさん見ていますが、その孤独感・勝ち残りたいという気持ちに物足りなさを感じることが多々あります。
多様性の中で自分自身を信じ、想像を超える努力をしてきて、その結果を世界の人間に伝えて勝ち残る気持ちで行うピッチとは伝わってくる緊張感が違います。世界で勝ち残る壮絶さを目の当たりにしました。

GTI2024ではアジア初の快挙となる日本代表のThermalyticaが優勝しました。ファウンダーであるRudder Wu氏は台湾生まれ、カナダの大学で本人曰く物凄く勉強して卒業し、ロンドンの大学で博士を取ったという方です。確かに彼の視点や考えは常に競争と世界を意識し、誰にも負けない努力で製品開発をしてきたことを十分にうかがわせる人物です。

GTI2022もGTI2023も日本代表は素晴らしいピッチを行い、世界に日本のディープテックの強さを見せてきました。ピッチ内容も素晴らしかったのは言うまでもなく、実に流暢な英語で話してくれました。しかし、優勝はできませんでした。

世界で勝ち残るためには語学力も技術内容も世界水準でないといけない、そのためには海外の空気を感じ、常に海外を意識して努力し続けることが、世界で勝ち残る人材を作るのだと改めて感じた次第です。

(2024年11月28日 記 あずさ監査法人 常務執行理事 阿部 博)