#11 2025年 本年もよろしくお願いします~2025年のスタートにあたって

昨年は、1月1日の能登半島地震で重苦しいスタートでした。1年間早いものですが、未だに能登半島復興が進まない状況に苛立ちを感じている向きも多いかと思います。この苛立ちには、日本社会の構造的な課題が内在していると思います。

今年は戦後80年の節目の年です。以前、「金融・資本市場リサーチ」5号(2022年2月)で、筆者が引用したことがある半藤一利氏の1984年に行った「太平洋戦争下の提督たちのリーダーシップ」という講演の中で、「日本の歴史というものをずーっと眺めますと、40年という区切りがまことに面白い」という話があります。

それは、日本とアメリカとの間の正式な修好条約締結時の1865年から40年は、坂の上まで駆け上がり、その後40年で元の木阿弥にしたということ、さらに戦後40年で1985年まで、「その坂道を転げ落ちた日本がもう一ぺんスタートから出直して、まさに新しい近代民主国家をつくってきたという40年間ではないかと思います。・・・ところが、この4、5年前くらいから、もう皆さん方も、身にしみて感じておられると思いますが、その戦後日本も、何となしにガタが来ているのではないか。それは、政治的にも、経済的にも、文化的にも、精神的にもいえるようです。・・・新しい40年が来年から、もしかすると始まるかもしれません。・・・」と言っていました(『歴史探偵 開戦から終戦まで』(2021年12月発行:文春新書)より)。

筆者として本タイムフレームを踏まえて考えると、1865年から1945年までの80年は国家としての日本の富国強兵のチャレンジと失敗であり、一方1945年から2025年までの80年は、日本の復興と平和のチャレンジであり、「平成の失われた30年」はあるにせよ戦後80年の歴史から得られた日本社会にとって価値は、極めて大きいものがあると思っています。

この戦後の80年の期間で得られた土台を崩れないようにしつつ、まずは、今後の40年(2065年に向けて)、何を改革して、日本社会の共通価値を作っていくかについて、2025年は考えるべき1年にすべきかと思います。

NHKで、司馬遼太郎の「坂の上の雲」の再放送をしています。
もはや、日本社会が昔ながらの「坂の上の雲」を目指すことは難しいと思います。これからの「坂の上の雲」は、何が「坂の上の雲」の価値なのかを考えることが必要ということかと思います。

足元、世界で分断が進行し、極端な認識ギャップが様々な形で広がっている中、日本はまだまだ、共通の社会価値はあり、コミュニティの重要性、教育や「学び」が最も基本的な価値に通じていることなどについて、世代間、地域間、マジョリティとマイノリティ間などで、ギャップを埋めにいくことができるのではないかと思います。

そうした観点で、個々人が同じコミュニティに依存し過ぎず、様々な主体とオープンに関わっていくことこそ、日本社会の将来価値を作っていくのではないかと思います。

「内と外との連携」「世代を超えたコミュニケーション」「地域を超えた接点や連携」「ダイバーシティ」「マジョリティとマイノリティの連携」など、労力のかかる取り組みを、個々人それぞれがよって立つところから、少しでも始めることができると良いのではと、新年に思った次第です。

筆者としては、大幅リニューアル版となる「金融・資本市場リサーチ」や書籍発行や本メルマガなどを通じて、そうした取り組みを少しでも進めていければと思います。是非、読者の皆さんのご意見もお聞かせください。

(2025年1月6日 記(2025年スタートにあたって)イノベーション・インテリジェンス研究所 幸田博人)