#5 紙面から感じ取る「金融・資本市場」の激動と成長

最近、1990年代の日本の金融・資本市場を振り返っています。筆者も当事者であったこともあり、色々と当時のことを思い出してきました。

近所の渋谷中央図書館で、日本経済新聞の縮刷版を書庫から引き出してもらい、1995年1・2・3・4月分、1996年11・12月分、1997年1・2・5・6月分を順番に眺め、必要なところを100頁程度コピーをしました。
金融・資本市場の当時の激動を感じ、今の「金融・資本市場」の落ち着いた枠組みから「金融・資本市場」の進化や成長が相当感じられ、意を強くしました。

同時に、「金融・資本市場」には何が起こるか常に身構え、その予兆や構造変化について絶えず考えておかなければならないことも痛感しました。

また、当時の「金融・資本市場」以上に、その当時の社会情勢が不穏だったことも思いだされました。阪神・淡路大震災、オウム事件、ペルーの日本大使館人質事件など大変な時代だったことなどです。

日経新聞の検索は、日経テレコンによるインターネット検索が常道ですが、この紙の縮刷版の威力、まざまざと感じた次第です。
ネット検索でない、紙の縮刷版であればこそ、時の流れとともに歴史が認識できる凄さがあること、インターネット検索ばかり活用する効率的な方法のみではなく、目から感じる紙の縮刷版の威力と意義を強く感じました。

最後に、最近発刊の書籍紹介を1冊したいと思います。2024年9月発売の中公新書で志村真幸著「在野と独学の近代」です。近代の在野研究者について、イギリスと日本の在野研究者を比較しつつ、学問におけるアマチュアとプロについて語っています。

イギリスからは、ダーウィン、マルクス、マレーなど、日本からは、南方熊楠、牧野富太郎、柳田国男、福来友吉、三田村鳶魚などです。日本の大学の特殊性について、「日本の学問世界は、大学と、そこに所属する教授たちを中心に形成され、イギリスに見られたようなアマチュアの部分は導入されなかった」(249頁)、「プロとアマチュアのあいだの協力関係も見落とされ、むしろ官と民としての分断が生まれた。」(250頁)、「学問の発達には、何よりも多人数がとりくむことが必須である。そして雑誌などの場を介して、科学的発見や学説、研究材料が共有されることが重要だ。」(254頁)とあります。

「金融・資本市場リサーチ」という場を通じて、金融・資本市場に係る“官”と“民”と“アカデミア”の交流、意見交換が活発化することに期待し、そういうことに役立つ場を意識して、さらに活動をしていきたいと思います。
皆様のますますのご支援を期待したいところであります。ありがとうございました。

(執筆者:2024年10月1日 記 イノベーション・インテリジェンス研究所 代表 幸田博人)