#38 企業価値向上と女性リーダーシップ

先般、東証ホールで「企業価値向上と女性リーダーシップ」シンポジウムを開催しました。
基調講演は、山道裕己氏、柳澤花芽氏、関口倫紀氏の3名の方、その後大学関係者、企業関係者などでパネルディスカッションを行いました。
リアルで100名、オンラインで400名程度の参加者があり、活発なシンポジウムでした。

米国では、トランプ政権がDE&I推進の見直しを進めており、様々なアクションをとっています。
日本においては、多様性という面ではまだまだの状況で、DE&I推進の取り組みを引き続き進めています。

現時点では、多様性の方向で具体的に進めていくべきことは数多くあり、声高ではなく静かに取り組んでいくことで、日本社会や経済に広く浸透していくと確信しています。

本シンポジウムの際に、講演者からも一部ご紹介があったことについて、以下話題にします。DE&I(Diversity Equity & Inclusion)や多様性関連の概念説明でよく使われる「Equality」、「Equity」、「Justice」についてです。

「Equality」、「Equity」、「Justice」については、図柄で視覚的に理解することがわかりやすいので、よく使われる図柄にベースボールゲームを球場外から観覧するときの状態の絵柄や、同様のものでサッカー場の絵柄、リンゴの木になっているリンゴの実をとるときの梯子にのった絵柄、日の出を坂道で見るときの絵柄など様々なものが世界中で使われています。

これらの絵柄では、まず「Equality」では同じ踏み台の高さで「平等」ではあるものの視野は身長の低い子供には十分には得られていない状態が見え、人がそれぞれの置かれている状況やステージを一律に「Equality」平等である形態は適当ではないことが見てとれます。

「Equity」では踏み台の高さを調整することで視野を「公平」にする状態となります。いわば、バッファーを付加することで、レベルをあわせにいっています。

「Justice」では、社会制度などの是正も含めた「公正」を担保することを意味し、「公正」を担保する場合は、リンゴの木の果実が片側に偏って実をつけている場合は、その実が、全般的に行き渡る状態にしていくことで、「Justice」公正という概念を確保していくことになります。インターネット検索で「Equality」、「Equity」、「Justice」という単語を入れれば、絵柄が出てきますので、それも参考にしてもらえればと思います。

この話は、今までは女性にやや高めのハシゴや土台を提供することで、「Equity」平等な状態を作り出すことをポイントとして、様々な取り組みが進んできたと思います。

その際、過度に高いハシゴにならないように注意しつつ、本人のモチベーションアップで進めるようにすることが将来の成長やキャリア形成には必要で、そうしたアジャストをしていくことが重要だと思われます。

さらに、現在は実がなっていない方で踏み台を高くしている場合は、踏み台からまんべんなく実がなっているところにリーチできるように、「Justice」公正の下での取り組みが重要になっている段階と思われます。

今後のDE&Iを考えると、そうした「Justice」公正の概念での取り組みが大切なポイントになります。この「Justice」公正という概念はやや分かりにくいので、少し補足をします。

「Justice」公正とは、実が偏ってなっている場合は、実がまんべんになるような木に変えていくないしは、実がまんべんになっている方にリーチできるという同条件の下での取組みです。

企業内組織で言うと、女性が積んできたキャリアルートを、より「Justice」公正にしていくことや、取締役の女性の比率は上がっているものの女性社外取締役に加え社内執行サイドの取締役を増やしていくこと、さらにはCXOという経営幹部ポストに女性が就任しているケースが少ないことの是正など様々な構造上の課題に取り組むことが求められると思います。

「Equality」、「Equity」、「Justice」については、どういうことか理解は進みつつあると思いますが、特に「Justice」公正については、企業や団体でどう取り組むか大変難しいところもあると思われます。

「Justice」公正のアプローチについて、社会や企業内での幅広い理解が得られるかは、まだまだのところもあるでしょう。何が「Justice」公正なのかについても議論が分かれるところもあり、既得権益サイドからは「急にルールが変わった」という受け止めも、より強まると思われます。
道が遠いところもありますが、こうした取り組みが必要な段階かと思います。

残り字数も少ないですが、一冊の新書を紹介します。

ドナルド・キーン、河路由佳『ドナルド・キーン わたしの日本語修行』(白水社 2026年2月)です。
ドナルド・キーン氏に、日本語、日本文学の学習と教育について語ってもらった河路氏によるインタビュー(インタビューは2012年に実施されたもの)をまとめたものになります。

海軍日本語学校での日本語学習、戦時中の体験、戦後の日本語・日本文学の教師時代の話など日本語とともに歩んだ時代の話をインタビューとしてとりまとめていて、大変興味深いところです。

教え子たち(3名)が、師ドナルド・キーンを語るインタビューも添付されていて、ドナルド・キーン氏の弟子たちとの温かいやりとりを彷彿させるところもあります。
私の勤務している大学にも留学生がいて、日本語のレベルが高い学生が多くいます。

また、スマホなどの発展で語学の壁も低くなっています。日本語の素晴らしさを感じて日本文学・文化研究に大きな貢献をされたドナルド・キーン氏のような方は、もう2度と出てこないかもしれません。

現在、世田谷文学館で、『ドナルド・キーン展』が開催中(2025年11月15日~2026年3月8日)とのことです。遅ればせながら、私も行ってみようと思います。

皆さんから、本エッセイ含めてご意見をお寄せください。

(2026年2月14日 記 (フィギュアスケートの男子のイリア・マリニン(米国)が8位、ビックリです)イノベーション・インテリジェンス研究所 代表 幸田博人)