生成AI時代に本格的に入っています。2022年11月に公開された「ChatGPT」からまだ2年も経過していないのに、現在の浸透度は驚異的です。
今年のノーベル自然科学3賞において、その内2賞がAI関係ということで、大変驚きました。またノーベル自然科学3賞のほとんどが米国研究者ということで、テクノロジー開発の一極集中度の高さを踏まえると、米国の席捲度は強まる一方です。日本の人材育成と人材教育のあり方を根本から考え直すタイミングのようです。
たまたま外部寄稿の関係で、文部科学省が昨年(令和5年)7月に公表した「初等中等教育段階における生成AIの利用における暫定的ガイドライン」を見ました。
その中で、生成AIの教育利用の基本的考え方について、「生成AIに全てを委ねるのではなく自己の判断や考えが重要である・・・各教科等で学ぶ知識や文書を読み解く力、物事を批判的に考察する力、問題意識を常に持ち、問いを立て続けることや、その前提としての「学びに向かう力、人間性等」の涵養がこれまで以上に重要となる」としています。
初等中等教育段階だからこそ、生成AIについて慎重に取り扱うことは必要と認識されますが、生成AI時代の教育をどうしていくか、文科省が指摘する教師の生成AIリテラシー向上という課題も大きな論点といえるところでしょう。
当該資料には、「フィルターバブル現象」(⾃分の好む情報「だけ」に囲まれ、多様な意⾒から隔離されやすくなる現象)、「エコーチェンバー現象」(同じような意⾒が、閉ざされた空間の中で反響して⼤きくなっていく現象)についての懸念もあわせて示されています(その資料に図表も出ているのでご覧ください)。
視野の狭い人材が増加しないように、多様性の重要性がますます高まっていることを、こうした文科省の資料からもうかがわれるところです。
生成AIを巡る急速な進展を踏まえつつ、スマートフォンからの情報やSNSとの付き合い方を含めた「情報リテラシー」をどう個々人が向上させていくか、なかなか難しい世の中になってきていると感じた次第です。
(2024年10月20日 記 イノベーション・インテリジェンス研究所 代表 幸田博人)