日本のスタートアップの非連続成長に向けて(株式会社アセンヴィア・パートナーズ  代表取締役社長 須賀 宏典 氏)

ここ30年、日本からグローバルで存在感を放つ巨大企業がほとんど生まれていないという事実は、スタートアップ・エコシステムの構造的課題を如実に示しているのではないかと思います。

かつてはソフトバンク、GMO、楽天、サイバーエージェントといった企業が、インターネット黎明期の波を捉え急成長し、さらに遡れば、ソニー、ヤマハ、ホンダといった企業も、技術革新と市場創造を武器にした典型的なベンチャーであり、日本型イノベーションの象徴でした。

パナソニック(旧松下電器産業)もまた、創業当初は強い創業者精神に支えられたスタートアップであったと捉えることができると思います。

近年、日本でメガベンチャーが生まれにくい理由として、「起業家精神の不足」「資金不足」「教育者の不在」という三点が挙げられることが多いと思います。

しかし、資金面に関しては、この見方はもはや現状を正確に反映しておらず、確かに米国と比較すれば、GDP比でのベンチャー投資額やレイトステージ資金の規模には差がありますが、日本国内ではスタートアップへの投資残高が急増しています。

実際、年間の投資額はIPOおよびM&Aを合算したエグジット総額を遥かに超えており、これは資金供給が過剰であること、すなわち「キャピタルの滞留」が起きていることを意味しています。

資金調達問題が解決した現在、問題の本質は人材配置にあるのではないでしょうか。

米国では、優秀な経営人材や技術人材がスケール段階にある企業へ集積し、組織能力と市場支配力を高めていく。一方、日本では、優秀な人材が比較的早期に起業へと分散し、その結果として時価総額数百億円規模での小型IPOが量産される構造が形成されてきました。

これは「スケール前の流動性確保」が合理的選択として機能してしまっている市場設計の問題でもあるのかもしれません。

教育の役割も見逃せません。日本の大学は研究・教育機関としては世界水準にありますが、アントレプレナーシップ教育やスタートアップ育成、特にPMF(プロダクト・マーケット・フィット)以降の成長戦略やガバナンス設計、資本政策といった実務領域の教育は弱いです。

米国の大学がアクセラレーターやVCと連動し、起業家の再現性を高めているのに対し、日本ではその接続が限定的であるように思えます。

こうした状況を踏まえると、今後必要なのは新たな起業家を増やすことも大切ですがそれ以上に、既存スタートアップを「非連続にスケールさせるための教育と支援」です。
資金、人材、知識を結節点として束ね、長期的視点で企業価値を最大化する仕組みや経営戦略を構築することです。

その領域こそ、今後の日本において最も社会的インパクトが大きい分野であり、私はこれまでの経験を活かし、このスタートアップベンチャーの空白を埋める役割を担う事により少しでも社会のお役にたてればと考えています。

(2026年1月7日 記 株式会社アセンヴィア・パートナーズ  代表取締役社長 須賀 宏典)