AI時代だからこそ『地球は青かった』を信じていきたい(Finatextシニアコンサルタント 兼 株式会社3VISION 代表取締役 水野 善公 氏)

『地球は青かった』——旧ソ連の宇宙飛行士ユーリ・ガガーリンが、人類で初めて宇宙から地球を見て帰還した際の言葉として知られる名言です。

米ソ冷戦の只中、宇宙開発競争が加速していた時代。その言葉は、宇宙からこの青い星を『鳥瞰(宇宙)』した人類が、平和や自然との共存に目覚める福音の言葉のように響きました。

思春期にこの言葉に触れた私は、純粋な憧れから航空宇宙工学を志しました。しかし後に知ったのは、ガガーリンの実際の言葉は「空は暗く、地球は青みがかって見えた」という、軍人パイロットらしい、より冷静な観察に近いものだったという事実です。

「地球は青かった」は、日本で生まれた美しい意訳、ある種のポエムだったらしいのです。

そんな私が辿り着いたのは、宇宙とは対照的に、世の中を経済の視点で『俯瞰(金融・AI)』する金融工学の世界でした。
金融工学はデータ解析の歴史そのものです。1990年代前半は市場データのみを頼りにアノマリーを探し、1990年代後半に財務情報が加わり、2000年に入りデータ収集のスピードが問われ、2010年以降はオルタナティブデータが重宝される時代になりました。

そして今、AIの登場によって非財務情報までが分析対象として可能となり、人の勘や経験に依存したジャジメンタルな運用と着眼点という意味での差は急速に縮まりつつあります。

最近では、組織資本と呼ばれる、業務プロセス・組織構造・ITシステム・企業文化・ナレッジマネジメントの仕組みなど、経営の表面的には見えにくい力が、企業の中長期的な成長を左右するものとして注目されつつあります。
AIが企業価値や市場動向を正確に読み解く時代において、企業は何をどのように語るのか、その姿勢そのものが問われるようになりました。

かつて「地球は青かった」と意訳された、その美しい言葉をやはり信じていきたいですね。
AIが事実を正確に語る時代だからこそ、人の胸に情景と感情を灯す意訳が、理屈を超えて世界を優しく整える力を持ち続けているように思われます。

『情緒(人間)』に宿る言葉こそが、これからの時代においても、人類を前に進める原動力であり続けるのかもしれません。

(2026年1月12日 記 Finatextシニアコンサルタント 兼 株式会社3VISION 代表取締役 水野 善公)