今秋にコーポレートガバナンス(CG)に関して、European Institute for Advanced Studies in Management という経営研究所のワークショップに参加しエストニアを訪れました。デジタルのことなど印象に残ったことを3点お伝えします。
■デジタルで発展するエストニア
会場のタリン工科大学では冒頭、同国の歩みが語られました。旧ソ連から独立当時(1991年)、欧州の最貧国となり生活は厳しかったそうです。
しかし政府中枢機関にいたエストニア出身の科学者達は祖国に戻ることを選び、その頭脳で、限られた資源をデジタルに振り向けて新しい道を切り拓きました(※)。
首都タリンは旧市街地は素敵な城景を残しつつ、新市街地では電気自動車が多数走り夜はネオンが美しく華やぐ、IT化の進む街です(その静けさに寂しさを感じる程です)。
デジタルが急速に経済を発展させることを示すかのようでした。
■CGで高まるデジタルの存在
開催地に因んで発表はAIやサイバーセキュリティなどデジタルの関連が相次ぎ、特にGoogleなどテック企業が欧州本社を置くアイルランドや座長の先生のいるスイスで、CGでもデジタルの研究が活発な様子が伺われました。
その中で、あるマネジメントの先生の紹介で初参加の私は、書籍発刊直後の内部昇進の女性役員をテーマとし、発表後は沢山の質問を頂きました。会合終了時にドイツの先生が「今日は日本のユニークな企業文化を知れたのが良かった」とコメントされるほどで、今の日本企業の変革にも海外の関心が高いことを感じました。
AIも多様な人材も、インプットする「情報」やアウトプットのプロセスにおいて、CGを変える可能性を持つ新たな存在なのかもしれません。
■未来に向けて
その後「Kood/Jõhvi」というユニークな学習法のIT人材養成校を訪問しました。行きのバスは隣が軍服の兵士で(大学のゼミ生達と同じ位の年の若者)、学校でお話を伺った職員は戦争開始後に夫と共にこの地に来たというウクライナ人の方でした。
今も隣国ロシアの影響で緊張が続く中、ドミトリーを備え24時間学習可能な環境で、将来のデータサイエンティストを夢見て若者たちが熱心に学ぶ姿が印象的でした。
日本で日々を平和に過ごせることに感謝しつつ、豊かな未来に向けて出来ることも色々ありそうです。エストニア訪問を通じて少しそのヒントを頂いた気がします。
※(参考)エストニアのデジタル化の歩みは、政府のサイトでも紹介。
This is the story of the world’s most advanced digital society:https://e-estonia.com/story/
訪問したe-Estonia Briefing Centre(政府による、海外からのデジタルに関する視察を受け入れる施設)では、職員による個別具体的な解説も行われていました。
(2025年11月20日 記 東北学院大学 情報学部 准教授 杉山 佳子)
