「ROIC経営」の落とし穴について考える(オムロン(株)前CFO兼グローバル戦略本部長 日戸 興史 氏)

皆さま 暑い夏、いかがお過ごしでしょうか。私は、オムロン(株)前CFO兼グローバル戦略本部長をしていた日戸(にっと)です。

現在は個人事業主として「全体最適な実践ROI経営」の講演や企業へのアドバイスを行なっています。少し硬めの話ですが、企業価値向上について最近感じている話、ご紹介させていただければと思います。

各企業に対して、投資家から企業価値向上へのプレッシャーが高まる中で、私にもROIC経営に関して相談が寄せられています。 

 ・株主、投資家が 厳しく要求しているから。 
 ・国やJPXが ガイドを決めているから。 
 ・他社もやっているから、横並び。

ROIC(投下資本利益率)経営は手段にしか過ぎず、外部プレッシャーによる受け身だけでやっても上手くきません。ROIC経営を通じ、何のために、何を実現するのか、どんな会社にしたいのかという意思の明確化が重要です。

施策を実行するのは社員です。成功のためには社員の納得感も同様に大切です。

企業は、事業を通じて世の中に貢献する存在です。
その存在が必要とされ、社会に貢献出来ているのであれば、対価としての収益はついてくるはずです。必ず向上できるはずです。

しかし自社では十分な投資ができない、上手に運営ができないために収益が上がらないのであれば、ベストオーナに委ねることも必要な意思決定です。
事業を活かせるとともに、社員の雇用維持だけでなく、成長機会を創出する事は経営の重要な責務です。

ROICはビジネスモデルや資本構造に左右されず、事業の収益性を表す有用な指標です。しかし、この指標自体は過去の収益性状態を表している結果にしか過ぎません。 本社がROICを指標としてモニタリングだけし、事業の責任を追及するだけでは、変えられない過去を議論しているのと同じです。

また数値の精度が必要以上に気になると、各事業に対して必要以上に費用やコストの配賦を行なってしまう事も多く見受けられますが、要注意です。

事業の本当の稼ぐ力が判らなくなり、意思決定が間違うリスクに繋がります。
またコントロール出来ないものを押し付けられた事業当事者からの抵抗に会い、ROIC経営自体の挫折に繋がります。
これは私の実体験です。 

経営と事業,社員が共通理解や認識を持つ中で、ROICを起点に各事業の収益性や収益構造を評価し、事業/会社の収益構造にどう変革させるのかという未来へのアクションがROIC経営だと思っています。

ROIC起点での議論には意味があります。是非、皆様とも意見交換もさせて頂ければと思っています。ご関心を持たれた方は、ぜひコンタクトください(koji.nitto@gmail.com)

(2025年7月28日 記 日戸興史)