『今日の〇〇地方の天気、晴れのち曇り、ところにより夕方には雷をともなった激しい雨が降るでしょう』9月21日の秋分の日までのふた月近く、『猛暑日』と並んでこのような天気予報を何回聞かされたでしょうか。
一言でいえば「今日は良い天気、夕立が降るかも」というところですが、これだけ並べておけば夕立に出くわした人も「やっぱり天気予報通りだった」と不運を紛らわすことになるのかもしれない。
AIの活用もあり天気予報は精度を増している一方、8月21日に東京都心港区を新宿区で100mmを超えるゲリラ雷雨に驚かされたように、近年の気候変動の激化で気象予測にも限界があるようです。
私たち視聴者が毎日脅されているような気分になる警報、注意報を並べ立てるばかりでは、本当に伝えたい『警戒警報』が埋もれてしまうのではないでしょうか。伝え方の工夫がほしいところです。
この夏は資本・金融市場でも変動の激甚化を味わう株価の大暴落(8月5日、日経平均株価4451円)が起こりました。
7月末の日本銀行金融政策決定会合で政策金利を0.25%引き上げるとのアナウンスが引き金となって円為替相場が急騰(161円の円安から1割の急騰)、海外投資家の利益確定売りが投資活動に未熟な国内投資家のろうばい売りを誘った結果といってよいかと思います。
地球温暖化は気候変動の激甚化の原因であるとされていますが、金融市場においても世界的なデフレ経済の進行によって金融資本市場のカネ余り現象が顕著となり投資意欲の熱量を増すばかり、加えて世界の隅々まで儲ける機会を求めての情報ネットワークが張り巡らされ、市場取引の電子化(アルゴリズム取引も進展)で、市場を動かすかすかな動機の変化も瞬時のうちに増幅される、これが相場変動の激甚化の原因です。
日銀の植田総裁は市場との対話を重視し、ていねいにマイナス金利政策からの脱却のプロセスを説明していました。
新聞紙面の特大の見出しで暴落が報道され、日銀の金利政策に誤りがあったようなコメントまで登場していましたが、市場は極めて冷静の事態を眺め、ふた月近く経った今日では3か月前の水準に戻っています。
日銀は市場との対話が求められてはいますが、時には市場を欺くフェイント・モーション(オペレーション)によって事の真実(r₋star中立金利)を見極めることも、真意を伝える一つの工夫ではないでしょうか。
(執筆者:2024年9月27日 記 株式会社許斐 取締役会長 大澤佳雄氏)