湘南の「夏」(元 西村あさひ法律事務所代表 パートナー弁護士 小野 傑氏)

5年ほど前、金融法務事情に金融法務にイノベーションをもたらすためには、常識にとらわれない自由な発想が必要であり、そのためにも知識や情報、交流の幅を広げるため、多趣味に関心を持つことが必要と勝手なことを書きました(2106号)。

その際、サーフィンについては始めたばかりなので後日と述べましたが、その後、サーフィンを生活の中に取り込み、毎朝心身の除菌滅菌のためにも海に入ろうと、江ノ島に向かって右側に位置する片瀬海岸沿いに移住しました。

そこでこの機会を利用し、昨年末40年在籍した西村あさひ法律事務所を退職、自由、気ままなソロ弁護士となって初めての明るく緩い湘南の夏について、雑文を記したいと思います。

夏の間、片瀬海岸では海水浴規制が入り、朝は平日9時、土日は8時までしかサーフィンはできません(夕方は5時から)。そのため、早朝から海に入った数百名のサーファーがニコニコと一斉にこの規制をきちんと守る姿はいかにも日本らしく思います。

とはいっても、「熱中症警戒情報が出ているので不要不急の外出は避けるように」というアナウンスが流れる中、以前の湘南とは異なり、海水浴客はまばらです。

台風が近づくと、大きく良質な波が到来、今年も7号、10号と待ちに待った多くのサーファーたちで賑わいましたが、一方台風で遊泳禁止のため海水浴客はなく、サーファーが引き上げた後の誰もいない海は物悲しさすら感じました。(なお台風の中海に入るのは若干の勇気も必要で、昨年夏にはボードを折って仲間から賞賛されました。)

また、夏の間、海岸沿いにはそれぞれ個性豊かな数10軒にも及ぶ海の家が立ち並びますが、実は海の家は夜が楽しく、既に日は落ち心地良いです。

南風が吹き抜ける海の家で、ビールを片手に大はしゃぎの若者たちで賑わいますが、まだコロナの影響引きずってるのか、夜は早く8時半で店じまいです。

営業期間も最終日曜日、今年でいえば9月1日をもって一斉に終了(最終日は盛大なお別れ会で盛り上がりますが)、翌日からは人気は去り取り壊しが始まります。

では、サーファーも海水浴客やビジターも湘南の夏を心から楽しめるようにするにはどうしたら良いかということですが、以下のようなアイディアはいかがでしょうか。

世間では、ナイトサファリとかナイトミュージアムなど夜の時間の充実のための企画が取り上げられていますが、暑さ対策も兼ねてナイトビーチをオープンし、海もホテルのプールのようにライティングする。昼間の海と同じ広い範囲である必要はありません。

ちなみに、世間ではライフセーバーの要員の不足が問題とされていますが、サーフィンも認めるのであれば、サーフボードという巨大な浮力体をリーシュコードでつないでいるロングボーダーは溺れている人を見過ごすような事は決してしません。

海の家も日の出を見ようと、朝まで飲んで騒いでも大丈夫なようオールナイトで営業し、期間についても夏だけどしないで1年中サーファーたちも利用できるようにする。財布や携帯を持ち歩けないサーファーの支払い手段については、今の時代、アイディアで簡単にクリアできるでしょう。

現状に慣れた人々にとっては夢物語のように感じるかもしれませんが、現在の姿はすべて規制のもとに出来上がったスタイルです。

それに慣れて、それなりに生活のペース合わせ居心地良いとしても、より楽しく充実した湘南ライフを地元だけでなく、皆で共有できるようにするためには、こうした規制を根本から見直す機運も必要でしょう。

(執筆者:2024年9月19日 記 弁護士 小野傑氏)