欧州の夏を彩る三大自転車ロードレースのジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランス、ブエルタ・ア・エスパーニャの締めくくりは、9月14日にマドリードのブエルタ最終日がパレスチナ支持者のデモで中断される形となりました。
すっきりしない幕切れも、自転車ロードレースがスポーツを超えた文化であることの証です。
その象徴である7月開催のツール・ド・フランスは、全長3,300km、獲得標高52,500mを超えるコースを3週間かけて走破、開催地域の歴史や暮らし、環境と共に世界中の35億人のファンが観戦しました。
自転車ロードレースの面白さは、高い戦略性です。チームの戦術と心理戦が交錯する中、順に風よけを作るローテーション、アタックを仕掛けて形成する逃げ集団、短距離戦で後方に陣取る牽制など、駆け引きは複雑です。
また、個人総合優勝だけでなく、ステージ勝利、山岳賞やポイント賞など複数の目標が存在し、チーム各員の役割分担、データ分析、機材やトレーニング・栄養補給法の進歩がその勝敗を左右する点も現代的な魅力です(機材では日本の誇るシマノが自転車の中核であるコンポーネント部分の寡占の一角を占めています)。
SDGsの観点からも自転車ロードレースは注目されています。自転車利用の促進は脱炭素社会の構築に繋がりますし、観戦者が地元産品を購入することで地域経済の活性化にも寄与する等、スポーツとサステナビリティを結びつける好事例です。
近年は欧州以外の地域からの関心も高く、中東やアフリカでも大きなレースが開催されています。
日本でも国際レースは開催されていますが、彼我の差は大きいです。欧州では一般道を封鎖して大規模レースを行うのに対し、日本では道路規制が難しく、長期ステージレースの開催は未だ当局の理解を得ていません。
また欧州ではロードレースは地域のお祭りとして定着しており、沿道には家族連れが集まり地元産品を楽しみながら観戦するのに対し、日本では競輪等のトラック競技の普及が先行したこともあり、競技人口や観客層が限られ、地域と結びついたスポーツとしての成熟は道半ばです
日本は豊かな山岳地形と特色ある地域を持つ国です。ジロやツール、ブエルタのように山岳を含む日本全国のコースを巡ることで、必ず日本独自のロードレース文化を築けます。拡大されたツアー・オブ・ジャパンを世界や日本のトップライダーが駆け抜ける姿を観るのが私の夢です。
(2025年9月20日 記 日本協創投資株式会社 取締役会長 櫻田 浩一)