緊張感(日本成長支援パートナーズ 代表取締役社長 都竜大氏)

10月の3連休に、大阪にある世界最大級の水族館「海遊館」に行きました。
大きなジンベイザメやエイたちが悠々と泳ぐ巨大な水槽が印象的だったのですが、その水槽には、アジやグルクマなどの群れが一緒に優雅に泳いでいました。
興味深いことに、天敵であるサメやエイとあえて同じ水槽に入れることで、群れをなす魚たちは緊張感を持ち、通常の1.5倍も長生きするそうです。

では、企業にとって「天敵」は誰になるのでしょう。上場企業においては、アクティビストが株主の権利を積極的に行使し、経営改善や株主還元を求めることで、経営陣に対して大きな影響力を持つ存在となり得ます。

一方、未上場企業では、株主が固定化されるため、外部からの監視が不足しがちです。特に、同族会社は経営権が特定の親族に集中しているため、意思決定が迅速に行える一方で、経営陣は自らの判断に対するフィードバックを受けにくく、緊張感が薄れてしまいます。
その結果、業績への危機感や競争意識が鈍り、企業の持続可能性が脅かされる恐れがあります。また、経営陣が親族であることから、意見の対立が生じにくく、内部での健全な議論が不足し、経営の透明性が低下することも懸念されます。

私は、未上場の同族会社の少数株主から、次のような相談をよく受けます。

「業歴の長い未上場の同族会社の株式を、相続により10%ほど保有しているが、自分自身は会社の経営には全く関わっておらず、現経営陣とは面識もない。現社長は自分の子供たちを会社の役員にし、高額な役員報酬をもらっているが、株主への配当は全くない。
事業成長は鈍化しているが、会社の資金を事業に使わず、本業と無関係な投資信託で運用している。これ以上、株式を保有する意味もないので売却したいと考え会社に相談したが、まともに取り合ってもらえない。何とか売却できないか。」


緊張感が薄くなり、会社業績や企業の持続可能性への危機感もなくなった経営陣が、公私混同しガバナンスが機能していない典型的なケースです。

近年スタートアップのエコシステムが注目されていますが、加えて未上場の同族会社の株式も、より流動化しやすくなるよう環境整備が進めば、会社の経営に関与できる新しい株主が増え、結果的に経営に緊張感が生まれるのではないでしょうか。

ひいては、ガバナンスが機能することで企業の健全な経営や財務状態の維持につながり、日本経済の好成長に寄与するのではないでしょうか。

(2024年10月18日 記 日本成長支援パートナーズ 代表取締役社長 都竜大)