#19 トランプ政権100日から考える ~見えてきた4つの視点~

この5月の連休中、私はカレンダー通りで過ごしました。前回ご紹介した辰濃和男著『ぼんやりの時間』(岩波新書;2010年)のように、ぼんやりと過ごす時間は大変貴重ということを言いながらも実践できていません。

私自身は連休中も原稿書き、大学の講義(休日講義もあり)、読書などで過ごしていて、特に目新しいことはできていません。
強いて言えば、和菓子屋や甘味処などで数年前からかき氷のスタートが1か月前倒しになっていて、今年も昔の6月1日スタートから5月1日になっていたので、この連休中に宇治金時のかき氷を楽しみました。

やはり猛暑や酷暑のせいでかき氷は人気があることに加え、タイミングも気候変動対応で、ビジネスが拡大しているということで、5月1日スタートでした。
筆者は5月3日に今年のかき氷デビューも果たして、連休中に少し気分転換をしました。

さて、トランプ政権100日が経過しましたこの100日で見えてきたことが何か、私なりの観察の視点で以下の4点についてお示ししたいと思います。

第1に、トランプ政権の基盤は強固であることです。これは、政策面でここまでの強行路線かつ極端な政策を指向しているにもかかわらず、支持率は大きく下がらず、また議会や司法、さらには野党である民主党の反発は必ずしも大きくなく、組織的な活動は十分にはできていないように見受けられます。

そういうこととあいまって、トランプ支持基盤は一定の安定感を示しています。これにより、内部専門家からの政策面でのアジャストを要請する力は弱く、また内部体制は崩壊しにくいと思われます。

来年秋の米国中間選挙までは、少なくともトランプ政権が不安定になる可能性は高くないので、そのトランプ政権との短期的な折り合いのつけ方と、長期的な米国との付き合い方を並行的に考えて対応していくことが求められています。

第2に、経済政策(なかんずく関税政策)から読み解くことは、以前より明らかに米国の経済力が落ちており、社会・経済面からの格差が広がっていることであり、米国の復活をかけた政策面での効果は、空振りにおわる可能性が相応に高いことが見てとれそうです。

看板の経済政策である関税政策が、短期的な金融市場や株式市場に大きな影響を与えることのデメリット(市場がマイナスの方向に働くこと、更には成長制約的であることなど)もあり、看板政策がたえず揺れ動く可能性を見ておくことも重要でしょう。

その際、米中対立構造のなかで、相対的に中国がよりうまく立ち回れる可能性もあり、中国やインドなどに本関税政策が何をもたらすか、よく見ておく必要がありそうです。

これは、米国の関税政策の持続性にそもそも黄色信号がついており、関税政策から米国製造業の復活をもたらすというロードマップは、ほとんどナローパスでしかないということが明白になりつつある感じがします。

第3に、政治的、社会的な面での米国の過激化や分断化は一層ひどいことになる可能性が高いと思われ、それが大きな懸念事項です。

例えば米国製造業の復活が見込めない場合に、ラストベルトの白人労働者の人材価値をどう上げていくのか、分断や過激化が進むだけなのか、米国の教育や人材力はどう変化するかなど、国家のあり方論としての人材力の評価をより見極めておくことが必要でしょう。

その対応が難しいと、米国社会がより不安定で過激化していくリスクが生じるため、それに備えていく必要も出てきます。

第4に、米国の将来的な競争力に構造的な視点から大きな陰りが見えてくることが予想されることとの関係です。

ダイバーシティの否定や、大学研究力を政治的な要素を中心に組み立てていること、大学や政府機関への研究投資の制約などから、将来の中・長期的な米国の競争力の基盤が失われていくのかどうかということです。

筆者は、これについては世の中の報道で言われているようなダメージは、実は米国には生じないのではないかと今のところ思っています。米国の基盤のイノベーション力や研究力は、したたかに強靭である感じがしています。

米国の近時の競争力はイノベーション力と、デジタルプラットフォームの優位性に加えて、金融市場にマネーが流入するドルのパワーの裏付けが大きな要素です。こうした金融面からのアプローチでの評価も、今後視点としては重要かと思います。

これからも様々なトランプ本や、トランプ政権の政策解説など多数の書籍やオンラインでの解説などが出てくると思います。
特に、マクロ的なグローバルな構造的問題とのリンケージを見ていくことが重要ですが、日々の動向もよくウォッチしつつ、歴史的な視点も持って見ていくべきでしょう。

いずれにしても、米国が世界のグローバル経済の中心にいる時代は終わりつつあると思います。
是非、皆さんからも本エッセイ含めてご意見をお寄せください。

(2025年5月5日 記(5月の連休もそろそろ終了です)イノベーション・インテリジェンス研究所 幸田博人)