最近の本メルマガでは、今回を含めて3回続けて米国トランプ大統領関連の話題となりました。 トランプ政権の話題に翻弄されないようにと筆者は言っていますが、そうは言いつつも、どうしてもこのトランプ大統領関連トピックに関心を向けてしまいます。 以前「米国支持者向けに、すべての事象を水面上でアピールして、次から次にアドバルーンをあげていくことで進めていくといった、フラッド・ザ・ゾーン戦略(情報の洪水で溺れさせる戦略)の巧みさ」(メルマガ14号)と言及しました。 「情報の洪水」のそれぞれの情報の背景に何かあるのか、その情報の本質的な意味は何かなど、根底にあるものを見ていく必要があります。一時的停戦という平和を求めるのはどういう立ち位置なのか、中国との競争環境をどう評価しているのか、なぜDE&I推進に反対なのか、なぜ関税の手法に拘るのか・・・・・などです。 そういう視点から、表面的に打ち出し取り組んでいることと、そのバックグラウンドとしての根本的な考え方や思想、哲学的な意思のような部分について、注視し分析しておくことが大事だと思います。 先日、或る金融関係者の方から、トランプ政権で大統領経済諮問委員会(CEA)の委員長にも指名されたスティーブン・ミラン氏(ハドソン・ベイ・キャピタルのシニアストラテジスト)が昨年11月に「A User’s Guide to Restructuring the Global Trading System」を公表しており、それが米国の今後の競争力の根源を考える上で示唆的であり、米国の金融の競争力論とも大きく関わっており、見ておくべき論文との話がありました。 この論文は、米国の安全保障政策、為替政策、通商政策(関税)をリンクさせて議論しており、長期的な米国の競争力や優位性の維持など米国の国家の力の源泉に、金融面の優位性やドル基軸通貨論が大きく関わり、それをいかに維持強化することの重要性が論文の原点として見て取れます。 この論文は、最近良く聞く「マール・ア・ラーゴ合意」(注;トランプ大統領のフロリダの邸宅である「マール・ア・ラーゴ」での合意として、新たな多国間通貨合意を示唆し、歴史的にはブレトンウッズ協定、スミソニアン協定、プラザ合意などと同様、歴史的な取り決めを意識したものと位置づけられる)に関する議論と大きく関わっています。 現在、一喜一憂して見ているトランプ政権の政策は、当然日々の為替動向、長期金利、株価など市場の動向に大きな影響を与えているわけですが、同時にその背後の考え方、米国安全保障面との連携、米国財政問題の取り組み、さらには米国の長期的な競争力(国力)の源泉の一つである金融面の世界での一極集中的な構造(富の集中)について、米国でどう強化されていくかという観点からも分析していく必要性があると思われます。 資本主義がどこに向かうのか、金融資本主義の本質は何かなど歴史的な転換点を意識せざるを得ない局面となってきたのではないかとも思われます。 トランプ政権が取り組んでいる新しい世界にチャレンジしていることの本質論は何か、これは、間違いなく金融や経済を巡る競争環境の再構築を行いつつ新秩序をもたらす可能性があります。 こうしたことを考えていくと、日本においても、10年・20年のタイムスパンを意識した時の、日本の金融や為替(通貨)の政策のあり方、米国からの大きな政策転換がもたらす金融面へのダメージを抑えるシナリオ的なアプローチなど戦略的な思考で、金融面からの大きな変化を見据えた日本の金融・財政などの構造改革について考えるタイミングにきているのではないかと感じます。 皆さんからも本エッセイ含めて、ご意見お寄せください。 (2025年3月24日 記(大相撲春場所 高安が優勝できず残念)) イノベーション・インテリジェンス研究所 幸田博人) |
ActiBookへのログイン
金融・資本市場リサーチはActiBookでお手元でページをめくるように内容をご覧いただけます。
ActiBookは会員区分によってお読み頂ける内容が異なります。

すでに定期購読をお申込みの方
これまでに発刊されたすべてのリサーチを見ることが可能です。
事前にメールにてお送りしているログインIDおよびパスワードをご入力いただき、ログイン画面よりログインしてリサーチをご覧ください。
定期購読を検討されている方
発刊して1年を経過したリサーチを無料公開しています。
最新号については、冒頭部分のみ閲覧が可能です。
「こちらよりログイン」のボタンをクリック後、「新規ユーザー登録はこちら」から新規ユーザー登録を行ってください。